エムエスツデー 2007年4月号

Interface & Network News 2
No.11

FL-net(OPCN-2)を使用した多重伝送システムのご紹介

 エム・システム技研では、2006年3月にリモートI/O R3シリーズの FL-net(OPCN-2)注1)通信カード(形式:R3-NFL1注2)を発売しました。

 FL-net(OPCN-2)は、日本の自動車産業を中心とするFA(ファクトリーオートメーション)の分野で生まれたプログラマブルコントローラ、数値制御装置、ロボット、パソコンなどの間を接続するネットワークの規格です。今回は、このFL-netを使用した多重伝送システムの納入事例をご紹介します。

FL-netとは?

 FL-netは、(財)製造科学技術センター(MSTC)に属するFAオープン推進協議会(JOP)のFAコントロールネットワーク専門委員会が開発を進め、1999年7月に仕様が公開されたオープンバスです。開発のきっかけは、(社)日本自動車工業会(JAMA)が工場に使われる通信バスに要求される仕様をまとめた「FAネットワーク要件」です。この要求仕様をどのように実現するかの検討会が、FL-netの仕様を策定する出発点になりました。2000年4月より、サポート団体が(社)日本電機工業会(JEMA)に移され、現在「OPCN-2」と名称を変更しましたが、一般的には「FL-net」と呼ばれています。

 通信媒体としてはEthernetを採用しており、HUB、トランシーバ、LANケーブルなど広く普及しているネットワーク機器を使用することができます。ネットワーク上には、最大254台の機器(ノード)を接続することが可能で、様々なメーカーの機器を接続することができます。通信方式としては、マスタ機器が不要なトークンバス方式を採用しています。各ノードが自分でネットワークの情報を収集管理しているため、ネットワーク上の1台が仮にハングアップしたとしても、他のノードは自動的にハングアップしたノードを分離し、通信を継続することができます。一般的なFL-netの構成を図1に示します。

図1 FL-netのシステム構成図

FL-netを使用した 多重伝送システム

 今回ご紹介するのは、社内でのデータ伝送用として、既設社内LAN(Ethernet)の予備線を利用して分散設置されたユニット間での伝送を行いたいとのお話があり、FL-netを提案してご採用いただいた事例です。Ethernet媒体を使用する通信カードとしては、オープンネットワークのModbus/TCPに対応する通信カード(形式:R3-NE1があります。しかし、このカードは、Modbus/TCPのスレーブ機器として使用されるため、パソコンやプログラマブルコントローラなどのマスタ機器が必須になります(図2)。

図2 Modbus/TCPを使用した多重伝送システム

 これに対して、FL-net(OPCN-2)用の通信カードR3-NFL1)では、マスタ機器が存在しなくても通信できるトークンバス方式を採用しています。このため、R3シリーズの相互通信についても、両通信カードをEthernetに接続し、付属のFL-net設定ツール(形式:R3-NFLBLD)を使って、実装しているI/Oカード情報のパラメータ設定を行うことにより、多重伝送通信を実現できます(図3参照)。ただし、FL-netの性質上、使用するEthernetはFL-net規格適合機器の専用バスとして使われます。したがって、一般的なTCP/IP機器と混在してFL-net上に接続できない点については、ご注意ください。

図3 FL-netを使用した多重伝送システム

 今回は、FL-netを使用した多重伝送システムをご紹介しました。

 今後も、お客様からのご要望にお応えして機能の追加、充実を図っていく予定です。ご愛顧のほどよろしくお願いします。

注1)『エムエスツデー』誌2005 年8月号「計装豆知識」参照。
注2)『エムエスツデー』誌2006 年2月号「リモートI/O R3シリーズ新製品 FL-net(OPCN-2)用 通信カードのご紹介」参照。

【(株)エム・システム技研 システム技術部】


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