エムエスツデー 2013年4月号

カンパニーアウトライン

Vol.11
工業計器メーカーの理想として

製品を「廃形」にしません。*1

 私たちは工業計器の理想として“廃形”しません。
 今回のカンパニーアウトラインでは、一度発売した製品機種をいつまでもつくり続け、お客様に継続して提供することの「意義」と「難しさ」をご紹介します。

工業計器メーカーの理想

 工業計器は、ひとたび稼働を開始すると24時間休むことなしに何年間も働き続けなければなりません。

 なにより工業計器には、対象設備が稼働している間は、トラブルなく作動し続ける信頼性が求められますが、当該設備の定期点検や、さらに設備が耐用年数を迎えたときや改修工事でのリプレースのときにも、同一機能、同一性能、同位置配線の製品で取り替えられることが、ユーザー側から求められており、メーカーとしても、とても大切なことだと考えています。

 もしメーカーの都合により、一方的に既発売品を廃形にしてしまっては、ユーザーが、代わりの製品を探さなければなりませんが、工業計器の特殊性を考えると、その時点で同等の製品が簡単に見つかるとは限りません。このようなとき、たとえばプラグイン形の信号変換器なら、古い変換器をソケットから引き抜いて、新しい変換器を差し込むだけでリプレース終了。お客様はそれ以上何も心配することがない、というのが私たちの願う理想です。

 エム・システム技研は、工業計器メーカーの理想として、ひとたび正式発売した製品の廃形は行わず、「いつでも手に入る」、「いつまでも手に入る」という安心をお客様にお届けしたいのです。

40年前のM・UNIT の広告と現在のM・UNIT変換器シリーズ

同等以上の「コンパチ」製品をご用意します。

 電子機器を製造し続ける上で、メーカーにとっての最大の困難は、その製品に組込む電子パーツがパーツメーカーの都合で生産中止になることです。電子パーツが廃止になった場合でも、通常は代わりとなる電子パーツを探すか、同等機能の回路を作成するための、設計変更で対応しますが、やむを得ず生産中止にする場合には同等以上の機能を有した互換性のある「コンパチ製品」をご用意します。

 しかし、通信ネットワーク用のICなど、ASIC(特定用途向けIC)やシステムLSIなどが入手不能になった場合は、やむを得ず、極めて例外的に廃形にする場合があります。また時代背景を考慮して、明らかにその役目を終え、リピートオーダーが全く見込めない製品(たとえばPC-98用拡張ボード)などもやむを得ず廃形にする場合があります。

電子パーツのエピソード

 通常、電子パーツが廃形になり、入手不能になるときは、パーツメーカーからあらかじめ廃止になる時期が伝えられるため、電子パーツ廃止予定の通知を受けると、社内の担当部署が設計変更に必要な期間を決め、生産管理部がその期間に出荷されるであろう台数を割り出し、パーツメーカーからその分の在庫をあらかじめ確保します。

 しかし、いつでもそううまく行くとは限りません。様々な理由でプリント基板の設計変更ができなかったり設計変更する準備期間さえ与えられないことがあります。たとえばプリント基板の設計変更ができない場合、新しいパーツとプリント基板の間にもう一枚小さなプリント基板をかませて、機能的には同じパーツとして働くようにしたりしています。

タイ洪水で電子パーツの供給が突然停止

 少し前の話になりますが、2011年にタイを襲った大洪水のことを覚えておられる方も多いと思います。

  自動車産業をはじめ、日本のあらゆる分野で深刻な被害をもたらしました。電子パーツの分野でもその例外ではなく、私たちが採用しているパーツも少なからずその被害に遭いました。とくに複数のパーツが現地の生産ラインを復旧することなく、そのまま生産終了することになってしまい、代替パーツがないまま、準備期間もない状態で突然部品の供給がストップすることになりました。しかし日頃から蓄えた「廃形しない」ノウハウで、1台の納期遅れを出すことなく乗り切ることができました。

 エム・システム技研は、品質を落とさず、昔と変わらない安定した品質でいつまでもお客様に製品をお届けして参ります。

2011年 タイ洪水

 

2011年 タイ洪水

 チャオプラヤ川流域で甚大な被害を出し、メコン川流域でも洪水が発生しました。2011年7月の上旬に発生し3か月以上続いた洪水により、7つの主要な工業団地が最大3m程度浸水しました。

 

 タイは日系企業の進出が3100社以上と多くあり、そのうちの日系420社以上が被害を被ったといわれています。

 

 

 

応急処置した電子パーツ

 

応急処置した電子パーツ1.トランジスタの代替え

2.発信器の代替え

3.ダイオードブリッジの代替え

 

 電子パーツの変化として、足の付いた「リード部品」からプリント基板に直接取り付けるタイプの「チップ部品」へと変わりつつあり、タイの洪水の例でも、「リード部品」の生産ラインなどが復旧することなく、生産中止になりました。

*1 電子パーツが廃止になった場合などでも、設計変更で対応いたします。
  ただし、代替の電子パーツを入手できない、あるいはリピートオーダが見込めない場合などは廃形にすることが
  あります。詳しくはホットラインまでお問合せください。


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