エムエスツデー 2017年4月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 この冬は特別強い寒波に見舞われ、日本中から積雪による被害の報道が流されていました。私の住む大阪も、例年より寒く感じられる日が多かったように思います。
 今年1月のある土曜日のことですが、空は晴れてまさに小春日和でした。私は急に思い立って四天王寺を訪れることにしました。四天王寺は、地下鉄天王寺駅を出て谷町筋を北の方向へ歩いて5分くらいの所にあります。大阪に長く住んでいて、日本最古の本格的な寺社がこんな至近距離にあるにもかかわらず、私の中ではそれの存在感が今一つ薄いのは、前の大戦で完全に焼失し、昭和38年になってようやく再建されたものであるからかと思います。なお、案内書によれば、四天王寺はそれまでにも何回もの焼失の歴史があり、幾度かの震災や落雷、そして織田信長による焼討もあったと記されています。
 建物そのものは、七堂伽藍がそびえ立ち、中門、五重塔、金堂、講堂が南北一直線上に並ぶ立派なものです。その北側には舞楽大法要が営まれる石舞台があり、そのもう一つ北側には重厚な六時礼讃堂があります。現在は中門と講堂がテントに覆われていて、そのテントには聖徳太子1400年御聖忌平成34年厳修と大きく記されていました。この四天王寺を建立された聖徳太子は、豪族たちが相争う戦乱の世を鎮めるために、推古天皇(女帝)により19歳の時に摂政を命じられ、それから約30年、国の体制を整えるために尽力されました。法律も何もない世の中がどんなものであったか想像するのも難しいことですが、太子は日本国初めてとなる17条からなる憲法を発布され、文明国として大陸の唐との交流を進められたそうです。世の中に規範も何もないところから国の形を定め、人間社会の本質を見抜いて法治国家を目指された太子には頭が下がる思いがします。
 四天王寺は、唐の時代の大陸との交易を盛んにするために、日本の玄関として建立されたそうです。現在の通天閣のあたりまで海であったので、そこから陸揚げされた物資の搬送ルートを建設されました。四天王寺の伽藍の南正面に南大門があり(これは別名庚申門と呼ばれています)その庚申門から南へ向かって大和川まで庚申街道が伸びていて、大和川を通って政治の中心斑鳩の地(法隆寺があります)まで繋がっています。ちょうど45年前(1972年4月1日)に計装用信号変換器のメーカーを目指して創業を果たしたエム・システム技研が、その庚申街道に面した住宅地の一角にあったので、今になって何か因縁めいたものを感じます。
 聖徳太子は日本の歴史上初めて17条からなる憲法を制定され、日本の形を打ち出されました。その冒頭の第一条に「和を以て貴しとなす」とされたのは素晴らしいと思います。

 エム・システム技研は、「システムの一括受注」を競う計装業界において、各大手工業計器メーカーが打ち出した、異なったアナログの統一信号(0〜10mV DC、2〜10mA DC、10〜50mA DC、4〜20mA DC、0〜5A AC、0〜110V ACなど)間を相互に変換接続する、(今でいう「プロトコル変換器」のような)変換器群を売り出して、自社独自のマーケットを構築しようと考えました。その発想の原点は、多分どの工業計器メーカーも、「自ら独自に打ち出した統一信号を、競合関係にある他メーカーの統一信号に変換する変換器は作るはずがない」と考えたからです。これは多分、業界初の発想ではなかったかと思います。そしてお買い上げいただくどのお客様とも等距離のお取引き関係を保つことで、工業計器の市場で「独立独歩のメーカー」になれるのではないかと考えました。そのうちに市場の反応を見ながら、熱電対や測温抵抗体などのセンサの信号も扱う変換器を商品ラインアップに加えて、「変換器なら何でも揃うメーカー」になるという意気込みで成長を目指すことにしました。
 超零細企業が、メーカーとして自社ブランドをかかげて独立独歩を守ってゆくのは口で言うほど容易ではありませんでした。「多品種、少量生産、短納期」で勝負することにしました。そして強力な先発メーカーに対抗して市場を獲得してゆくためには、製品の差別化を追求する必要がありました。そのために、計装システムのSEを経験した私に思いつく多種類の信号変換器を、手当たり次第に商品群に加えてゆくことに集中しました。形状は前例のない、小形でプラグイン構造にしました。単品販売を宗とし、価格の公表と、例外のない代理店販売方式を打ち出しました。これらの差別化の方針は今も受け継がれて美しく整備され、5つのエム ポリシーとなって結実しています。

① ひとたび世に出した製品は、いつまでも作りつづけます。
② 多品種で短納期、お約束納期達成率は99.99%です。
③ 「特殊仕様品」でも追加費用はいただきません。
④ 救済ワイド補償サービスを無料で行います。
⑤ 工場出荷時の初期設定作業は無料で提供いたします。

 このポリシーをどのようにして実現しているかを見易い小草紙にまとめて、「エム ポリシー」と名付けて毎年内容を更新して発行しています。

 電子技術は、ムーアの法則に従って発展を続けています。今では変換器に次ぐ出荷量を稼ぎ出しているのが「リモートI/O」と総称している商品群です。このリモートI/Oは現場に設置して、多くの現場に取付けられたセンサからの計測信号を入力し、それを各種のオープン化されているネットワークに乗せて多重伝送をする機能を果たします。
 このリモートI/Oは、DCSやPLCと接続して計装システムを構成するときの信号の入出力機器として使われます。またパソコンと組合せることで、「パソコンデータロガー」を実現します。エム・システム技研のリモートI/Oは通信機能の2重化と供給電源の2重化をも標準仕様に加えて、幅広い需要にお応えしています。用途に応じて多くのオープンネットワークが提案され、使用されていますが、まず国内で採用されているものは、ことごとく取り上げて商品化し、短納期でお届けしています。最近は一般用途に開放された周波数帯を利用した無線電波を用いたリモートI/O(920MHz帯無線を用いた「くにまる®」)を発売し、思ったより速い立ち上がりを見せています。一方、インターネットが普及しIoT(何でもインターネット)が次世代の巨大マーケットになると叫ばれていますが、エム・システム技研は、いち早く計測信号をインターネットに接続し、インターネット特有の便利な機能を利用できる手軽なインタフェース機器(商品名「データマル®」)を完成させて今や3年目に入りますが、当初思いつきもしなかった用途にも広くご使用いただいています。
 昨年末に完成し発売した「Webロガー2」は、現場設置のデータロガーユニットで、アナログ信号を64点まで取り扱えます。入力データの監視機能は「データマル®」がもつ機能をカバーした上に、大容量メモリを内蔵するとともに帳票機能まで備えていて、ブラウザソフトをもったパソコンやタブレットを用いてどこからでも遠隔監視することができる上、インターネットを経由すれば地球レベル規模の集中管理を可能にします。単価を15万円に設定したことから、加工機械や装置レベルの設備にも個別に取付けて、その設備の始動した時からの全ての履歴データを収録して、予知保全、予防保全を目的として大いに活躍するものと期待しています。
 また、すでに生産現場で活動している装置に「Webロガー2」を1台取付けるだけで、その装置は全運転データを記憶し、いつでも取出せる機能をもったIoT時代のインテリジェントマシンに変身します。装置メーカーの手許にあるコンピュータで、過去に出荷した全装置の運転データをリアルタイムで見ることができるとしたら、どんな世界が展開するようになるのでしょうか。それもこの「Webロガー2」の出現で夢ではなくなりました。
 創業当初から、お客様の目線で打ち出した基本方針を貫いてきたエム・システム技研は、いまだ成長途上です。『エムエスツデー』誌の読者の皆様には、よろしくご声援のほど、お願い申しあげます。

Webロガー2 システム構成例

四天王寺

(2017年4月)


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