エムエスツデー 2014年10月号

お客様訪問記

インターネットを利用したリアルタイム配水管理
香川県丸亀市に導入されたSCADALINXpro
Webロガーとによる水道施設の遠隔監視システム

(株)エム・システム技研 システム技術グループ

 今回は、丸亀市建設水道部を訪問し、水道施設の遠隔監視システムにご採用いただいたHMI統合パッケージソフトウェア「SCADALINXpro」とインターネット利用の遠隔監視データロガー「Webロガー」について、丸亀市建設水道部 上水道課 丸亀市浄水場 場長の井澤 彰 様と同浄水場の横瀬 考宏 様にお話を伺いました。

インターネット回線を利用した遠隔監視

 [エム・システム技研、以下エムと略称]本システムはいつから運用されていますか。

 [井澤様]2012年度の事業として完成し、同年度から運用しています。

 [エム]導入された経緯についてお教えください。

 [横瀬様]丸亀市は平成の大合併により、2005年3月22日に旧・丸亀市、旧・綾歌町、旧・飯山町が合併し、新・丸亀市として新たに発足しましたが、そのとき、水道事業も1つに統合されました。なお、本システムは、合併した飯山地区と綾歌地区の水道施設の遠隔監視を主な目的としています。

 もともと、旧・飯山町と旧・綾歌町には非常通報装置は設置されていましたが、テレメータなどで情報を1箇所にまとめて監視する「中央監視システム」の設備はなく、配水流量や配水池水位などのリアルタイム監視は行っていませんでした。旧・丸亀市の水道については、すでに合併前から「中央監視システム」が整備され、NTT専用回線を利用したリアルタイム監視の仕組みがありましたから、合併した飯山地区と綾歌地区にも同様にリアルタイム監視ができるシステムを導入すれば管理しやすくなると考えました。そこで、導入コストや維持管理が安価であることを条件にシステムを検討していたところ、たまたま『エムエスツデー』誌2012年7月号の「お客様訪問記」に掲載された岡山県真庭市に導入されたWebロガーの記事を目にして、詳細を聞くためエム・システム技研のホットラインへ電話をしたのが始まりです。

 [エム]横瀬様からホットラインへお電話いただいたとき、『エムエスツデー』誌掲載の「真庭市上下水道部」への導入事例についての詳細な説明要請があり、Webロガー(形式:TL2W)のデモ機を持参して訪問・説明させていただきました。

 ご採用のポイントは何であったか、お教えください。

 図1 制御盤

[横瀬様]Webロガーはインターネット回線を利用して簡単に監視できるのがポイントです。旧・丸亀市の「中央監視システム」では、NTTの専用回線を利用しているため、月々の回線利用コストがかなりかかっています。一方、飯山地区と綾歌地区の施設では監視のみでよく、遠隔(中央監視室)からの制御・操作は必要がないため、NTT専用回線ではなく安価な地域IP網を使ったインターネット回線による監視ができれば良いと判断しました。丸亀市には、先例の真庭市のような自営のIP網はありませんから、回線はNTTフレッツグループやケーブルテレビのサービスなどを検討し、最終的にセキュリティを考慮してNTTフレッツグループを利用したVPN接続を採用しました。

 また、システムの冗長化を図る目的で、中央監視システムだけでなく、現場に設置したWebロガーにもロギング機能をもたせてあります。万一、中央監視システムがダウンしても、現場のWebロガーだけでWeb画面による監視とデータロギングができることも採用のポイントでした。

 [エム]システムの概要や構成についてお教えください。

 図2 サーバ・クライアントPC [横瀬様]構成については図5を参照してください。

 現在は15箇所の浄水場やポンプ場、配水池にWebロガー TL2W図1)を設置し、配水池水位や流量信号、ポンプの運転・故障信号などを入力しています。

 Webロガーが設置されている現場の機場にはADSL回線で、中央の丸亀市浄水場には光回線で、それぞれVPN接続しています。そして、丸亀市浄水場にSCADALINXpro(形式:SSPRO5のサーバ・クライアントPC(図2)を用意して、各Webロガーの集中監視を行っています。SCADALINXproからWebロガーに対し常時通信を行い、SCADALINXproは1分周期でWebロガー内部の現在値を取得してPCの画面にリアルタイム表示しています。この取得したデータをもとに、SCADALINXproでトレンドグラフや帳票の作成、またアラームの判定などを行っています。

 さらに、運転ログデータについては、Webロガー内部で蓄積されたデータベースをSCADALINXproで取得して画面に表示できるため、通信異常になってもログデータが欠けることはありません。万一、Webロガーと通信できなくなった場合は、タイムアウトを設定していて、一定時間経過すると通信エラーのアラームを表示します。

図5 飯山・綾歌水道施設監視システム構成図

図5 飯山・綾歌水道施設監視システム構成図[拡大図

 [エム]SCADALINXproの監視画面では、どのような画面を表示されていますか?

 [横瀬様]システム設計を依頼した業者には監視画面に対してかなり無理な注文を言って作成してもらったため、とても良いものができたと思っています。具体的には飯山・綾歌系の全体フロー図を作成し、各施設の水位や流量などの数値を表示しているため、ひと目でリアルタイムに全体の情報が分かります(図3)。

図3 メイン監視画面

 それから、各系統の詳細フロー図(図4)やトレンドグラフ、帳票画面、アラーム画面を表示しています。

図4 系統詳細フロー図

リアルタイムで日量の水量管理

 [エム]どのように運用されていますか?

 [横瀬様]VPNは閉域網なのでEメールによる通報は行っていません。システムの監視は外部の業者へ委託して24時間監視しています。また、深夜の0時になるとSCADALINXproから自動で日報を印刷しています。

 エム]本システムを導入されてのご感想をお聞かせください。

 [横瀬様]以前は、水量の管理を係員が現場に行って流量メータを検針して手で記録をしていました。現在は、リアルタイムで日量の水量が自動的に記録され、その管理ができるため、早く情報が取得できるようになり、また情報の精度も上がりました。とくに飯山地区と綾歌地区は小さな町なので、漏水などがあると大きく水量が変化するため迅速に判断できます。

 また、いろいろと先手を打つこともできるようになりました。たとえば、夏場になると各学校でプールの水張りを行います。そのとき、配水池の貯水量が早く少なくなるため、学校へ連絡して一気に水を入れないでください、とお願いをしています。

 [井澤様]香川県の早明浦(さめうら)ダムが渇水になるとよくニュースで報じられているように、もともと香川県は降雨量が多くありません。飯山地区の水源のほとんどと綾歌地区の水源の約半分は早明浦ダムから給水されており、貯水する配水池の容量も小さいため、プールなどで一時に水をたくさん消費すると断水を起こしかねません。このシステムを有効に活用して、断水の発生だけは免れるようにしています。

 [エム]本日はお忙しい中をありがとうございました。今後ともエム・システム技研をよろしくお願いします。

 [井澤様]丸亀市はうどんだけなく、丸亀発祥の骨付鳥が有名ですので、ぜひ皆さんも食べに来てください。

拡大 Webロガー TL2W

【丸亀市のご紹介】
香川県丸亀市は、香川県の海岸線側ほぼ中央部に位置し、北は風光明媚な瀬戸内海国立公園、南は讃岐山脈に連なる山々、陸地部は讃岐平野の一部で、平坦な田園地帯が広がっています。また、瀬戸内海には本島、広島、手島、小手島、牛島などの島々が点在しています。早くから海上交通の要衝として、また、物資の集散地として発展し、とくに金刀比羅宮(ことひらぐう(こんぴらさん))の参道口として大いに賑わいました。1602年、生駒氏が亀山に築城し、丸亀城と名付けたのが「丸亀」という名の起こりといわれ、以後、城下町として栄えてきました。丸亀といえば“うちわ”です。全国シェア約90%を誇り、1997年5月、国の伝統的工芸品に指定されました。また、うどんと同様、おすすめするのが骨付鳥です。鶏の骨付きもも肉をオーブン釜などで焼き上げたもので、全国的にも珍しい料理です。マスコットキャラクターの「とり奉行 骨付じゅうじゅう」は、常に全力なので、汗(肉汁)をしたたらせながら各地でPRを行っています。

香川県丸亀市

本システムについての照会先:
(株)エム・システム技研
カスタマセンター システム技術グループ
TEL:06-6659-8200
FAX:06-6659-8510

SCADALINXproは(株)エム・システム技研の登録商標です。


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