エムエスツデー 2014年4月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 今年も1月14日からの3日間、テニスの4大グランドスラム大会の一つである「全豪オープンテニス2014」を、恒例のメルボルンで観戦してきました。
 このところ地球の温暖化が叫ばれ、異常気象が世界中で発生しています。アメリカ中東部地域が大雪に見舞われ、イギリスでは洪水が発生したと伝えられています。
 メルボルン滞在中の3日間、正午過ぎの大会会場の気温は何と40℃を超え、観客席の気温は43℃とも44℃ともいわれていました。とくに、炎天下の座席の温度は触るとやけどをするのではないかと思うほどで、私にはとても耐えられないものでした。持参した座布団を敷き、背もたれに寄りかからない姿勢で、かつ頭からスポーツタオルをかぶって、やっとの思いでフェデラーの試合を見ました。ここで気が付いたのは、アラブの人たちの服装が高温環境に適したものであるということでした。観戦を終わって帰国してみると、日本は結構寒いので我に返り、異次元の世界から帰ってきたような気持ちになりました。

 さて現実問題として、エム・システム技研が主力製品としている「工業計器」と呼ばれている機器群は、かつての高度成長時代には大いに威力を発揮したものでした。日本中のコンビナートで続々と建設されてゆく巨大生産設備に使用された計装システムは、オートメーション化の花形ではなかったかと思います。その頃の工業計器メーカー各社は、電子化の波をも味方にして、新しい計装方式を可能にする新製品を次々と発表し、市場に投入していたように思い出されます。
 オートメーションとは、本来熟練した作業員が経験と勘で築き上げてきた製造方法を、正確な計測技術とPID制御技術で、経験年数の少ない作業員でも同等以上の結果を出し、熟練した作業員達の職を奪うものだと批判された時期もあったようですが、プラントが巨大化するにつれ、人手ではとても行えない複雑かつ高度な運転制御を自動化された計装システムが担うようになって、工業計器花形の時代を迎えて行ったのだと思います。
 バブル経済が崩壊するまでは、この環境がいつまでも続くものと誰もが信じて、その伸長線上に未来を描いて事業計画を進めていたのではないでしょうか。ところが現実は厳しく、1990年代に入って行き過ぎた日本のバブル経済は崩壊し、多くの企業が破綻したり方向転換を余儀なくされたりしました。数多くの製造業が海外へ移転し、日本国内からは生産設備への投資が激減してゆきました。

 現在では少子高齢化の問題もあって、GDPが横這いの状況にあり、サービス産業の比率が高まっているといわれています。とはいえ、日本の製造業は身を縮めてしっかりと生産活動を続けていますので、高度成長期に建設された多くの巨大プラントは現在も生き続けて稼働しています。そして、そこに使用されている工業計器は、経年変化が目立ち始め更新需要が活発になっています。
 最近エム・システム技研にご用命いただく大口需要の多くが、この更新目的のご注文であることからもその辺りの事情を物語っているものと思われます。
 全国の生産設備の運転管理をしている工場の現場では、今や、どのような人員を現場に配置して、問題なく運転を継続してゆくかという命題に直面しておられるのではないかと思われます。多分それらの現場では、設備の稼働状況の監視およびメンテナンスの効率化をどのようにして果たすかという問題に取り組んでおられるに違いありません。

 エム・システム技研では、世界中に普及の波がゆきわたったスマートフォンやiPadのようなタブレット端末に、HMI(ヒューマン・マシン・インタフェース)の機能を持たせることが、メンテナンスの劇的な効率化を実現するのではないかと考えました。要はHMIを持ち歩けるようにしようと考えたわけです。
 既存の生産設備には、運転作業を担う計装設備はもちろんすでに完備していて、集中管理が行われています。昨今、スマートフォンやタブレット機器が急速に普及し、アップル社が躍進しています。エム・システム技研は、これらのタブレット機器をメンテナンス作業に有効に使いこなせないかを考えました。  
 そして、その結果具体化したのがここにご紹介する、計測データの蓄積とそのデータをWi-Fi電波に乗せて発信する装置(商品名:データマル®)です。この商品名は、筐体内に組み込まれたメモリに任意所望の計測データが常に貯まってゆくイメージを考えて、「データが貯まるデータマル®」としました。ユーザーの皆様に覚えていただき易い印象的な商品名は何だろうか、と考えた末に思いついたものなのですが、いかがでしょうか。
 現場に設置されたセンサが検出した計測信号をこのデータマル®に入力すると、種々の簡単な信号処理をするとともに、それらの信号はWiーFi電波に乗って発信されます。そして、それらのうちの任意所望な信号をいつでもどこでもスマートフォンやタブレットの液晶画面に呼び出して見ることができます。また、上下限の警報機能も備わっており、異常状態が発生すればメール通報をします。もちろん、美しいカラーのトレンド画面も表示されます。 
 このように今までにない新しい機能を持った新製品でも、メンテナンスの現場を担当する技術者の皆様に「これは使える!」と感じていただかなければ利用していただけません。何とかこれらの方々に認知していただこうと考えて、データマル®の体験用のデモキットも商品に加えて販売を開始しました。本体価格は5万円であり、入力点数が少なければ、必要な入力カードを加えても10万円でおつりがくる値段になっています。

遠隔監視・データロギング・イベント通報用 Web コンポーネント データマル®システム構成図

 こうして完成したデータマル®の活躍の場は、工場内におけるメンテナンスの省力化に留まりません。インターネットにWi-Fi接続されたデータマル®のデータや信号は、スマートフォンが使用可能な所なら世界中どこでも受信できます。実は、これがデータマル®の本来の用途ではないかと考えています。
 ボイラや冷凍機、コンプレッサなどで代表される装置類の運転状態を、外部のどこかで集中管理することができます。炉過装置、純水装置、太陽光発電設備、自家発電設備などにも適用すると面白いアプリケーションが次々に出て来るものと思われます。
 すでに具体化し始めている用途に、ユーザーの敷地内に設置された液体貯蔵容器にデータマル®を取り付け、ガスや液体の残量を外部のどこかで集中管理することで、原料メーカーがユーザーへの供給責任を充分に果たせるように考えられたシステムがあります。 
 さらに進んで、ユーザーのもとで運転されている機械設備などの予防保全を、メーカー側で自発的に行うために設置される遠隔監視をする用途も次々と考え出されてゆくものと思われます。
 データマル®の用途は限りなく広いため、今後どのようなアプリケーションが出てくるか予想がつきません。考えるだけでワクワクするものがあります。『エムエスツデー』の読者の皆様で、データマル®を試してみたいと思われた方がありましたら、エム・システム技研のカスタマセンターまでお気軽にご連絡ください。きっとお役に立つことができるものと思います。

 エム・システム技研は、これからもスマートフォンやタブレットを利用した新しい時代を拓く新製品を発表して参りますので、どうぞご期待ください。

吉野山桜景色 = 奈良県吉野郡

(2014年4月)


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