エムエスツデー 2012年10月号

お客様訪問記

長期間運用するシステムだからこそ「廃形しない」がキーワード
長野県上田市上下水道局の集中監視システムに採用された
テレメータD3シリーズ

(株)エム・システム技研 システム技術グループ

 今回は、長野県上田市の上下水道局を訪問し、腰越(こしごえ)浄水場で運用されている集中監視システムにご採用いただいたテレメータD3シリーズについて、浄水管理センター係長の西本 博之 様、主査の樋口 英一 様、システム構築を担当された、藤田エンジニアリング(株)の村上 仁 様にお話を伺いました。

エム・システム技研製品は廃形しないので安心

図1 腰越浄水場中央監視室

 本システムを導入された経緯についてお聞かせください。

 [西本様]エム・システム技研の製品に関しては、担当管理地域内の染屋浄水場で採用した実績があり、以前から知っていました。私どもは導入したシステムを長期間にわたって管理、運用していきますが、その間には、設備の追加・変更、故障などにより、機器を追加発注することがあり、その際、従来機器の生産が打切られていて調達できないことが、しばしば発生しています。関連技術の向上などに伴い新製品が増えることは非常にうれしいのですが、必要とする従来製品が購入できないことは運用側としては非常に困っています。

 エム・システム技研の製品については、廃形されないので、安心して導入しました。今回のシステム導入に際しては、製品寿命の長い機器もしくは代替機種が今後とも調達可能な製品を優先して、機器の選択をしました。

機器や部品の共用化による保守管理の容易化

 今回のシステム更新において、ポイントとなった点をお聞かせください。

 [樋口様]予備品などの管理を容易にするため、使用する機器や部品の点数を減らしたいという希望がありました。

 そのために、テレメータの構築では、できる限り機器や部品を共用化した設計とするようお願いしました。おかげで共用部品が増え、予備品の種類と数を十分に少なくできました。機器故障などで交換する際にも、保管中の機器の内蔵ディップスイッチ設定変更するだけで必要な機器を作り出せるなど、非常に便利になりました。

メンテナンス性に優れ、製品のバリエーションも豊富なテレメータD3シリーズ

図2 盤内に設置されたテレメータD3シリーズ

 システムの概要や構成についてお教えください。

 [村上様]今回は、丸子地区と武石地区の遠隔監視システムを構築しました。中央監視室は腰越浄水場内に設置しています。丸子地区では、18箇所の遠隔地を50bpsの専用線を使用してテレメータD3シリーズで監視しています。武石地区も同様に、7箇所の監視を50bpsの専用線を使用して構築しました。鹿教湯(かけゆ)浄水場だけは、遠隔制御、設定が必要になるため、TM/TC装置を使用した混在システムを構築しました。

 今回、採用したテレメータD3シリーズは、基本的に内蔵ディップスイッチの設定によって構築することができる非常に便利な機器であり、立ち上げやメンテナンス性に優れていることに着目して採用しました。

 また、製品のバリエーションが豊富な点も魅力的でした。従来型の1対1でのテレメータによる信号伝送も可能ですし、1対nといった通信も可能です。本システムでは、子局側にI/Oユニットを配置していますが、親局側にはI/O装置を配置することなく、PLC(プログラマブル ロジック コントローラ)と通信させることにて構成機器点数を削減しました。

 さらに1対n通信では、上位通信系統が1つのユニットとなり故障時に全ての通信が止まります。このような事態を避けるために、1対1通信で親局側にはI/Oを配置しない構成をとりました。

 テレメータ親局は、オープンプロトコルであるModbus/RTUによるシリアル通信でPLCとテレメータD3シリーズを接続しています。テレメータの監視局が、合計で25箇所と多いことからPLCをゲートウェイとして上位監視システムの負担を軽減させました。

 監視システムは、NTTフレッツ・VPNワイドを使用して浄水管理センター、丸子地域自治センター、武石地域自治センターと連係する運用システムを構築しました。監視端末は、Webベースで運用できるためタブレットPCなどから監視することも可能です。

エム・システム技研のサポート

 ご苦労された点はありますか?

 [村上様]正直、立上げ時の前半は多少苦労しましたが、エム・システム技研のホットラインに電話対応していただいたり、現地での技術サポートなども行っていただき、無事に立上げることができました。

 また、Modbus/RTUのシリアル通信でテレメータのデータを監視しているために、通信異常が発生した場合や機器の故障時に一定時間の通信遅れが生じてしまいます。その際には、通信拠点が多いことから通信の遅れが生じてしまいます。

 ダウン局が1つの局だけならよいのですが、複数局発生した場合は通信待ち時間もその数の分だけ長くなり、状態表示のレスポンスが悪くなってしまいます。そのためにPLC側の通信プロトコルをチューニングして、レスポンス向上に対応しました。

LEDランプ表示で接続状況を確認可能

 構築する中で何かご注目された機能はありましたか?

 [村上様]テレメータD3シリーズとModbus/RTUのシリアル通信で接続しましたが、エム・システム技研のホームページにある、Modbusのプロトコル概説書を参考に構築することができました。製品の仕様書、取扱説明書以外にも親切な資料があり、スムーズに構築できました。

 実際の作業としても、テレメータの回線数が多く、切替作業中にテレメータD3シリーズの前面に配置されたLEDランプ表示で回線の接続状況などを確認できるのはとても便利な機能だと感じました。

図3 タブレットPC

タブレットPCでリアルタイムに状況確認

 今後の追加や拡張のご予定はありますか?

 [西本様]現在、テスト的な運用として現場の作業員がタブレットPCを携帯し、リアルタイムに運用状況を確認できるようにしています。

 管理区域が広いために現場で点検作業中に、他の現場で警報が発生して急行することがあります。このとき、現場の状況を細かく確認してから行動できるため、多少の遅れが許されると判断できる場合には、作業を終了させてから警報対応できるため効率的に動けるようになりました。移動端末として、携帯電話網+構内Wi-Fiを使用した監視は、想像以上に便利に運用できています。

 今後は、監視拠点の追加も予定していますが、機器の追加に関しても、製品を廃形しないエム・システム技研の機器を採用したため安心しています。

 お忙しいところ、ありがとうございました。

図3 タブレットPC

図4 システム構成図[拡大図

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【長野県上田市のご紹介】
上田市は、2006年3月6日に上田市、丸子町、真田町、武石村が新設合併して誕生した、人口16万を擁する長野県東部の中核都市です。地域内には、信濃川の上流にあたる千曲川が佐久盆地から流れ込み、市の中央部を東西に通過し、下流は長野盆地へと続いています。緑溢れる森林・里山と清らかな水の流れる川に育まれた自然豊かな地域です。奈良時代から、京都と東北地方を結ぶ「東山道」の拠点として栄え、交通の要衝でしたが、現在はJR長野新幹線、しなの鉄道、上田電鉄別所線が上田駅で接続し、上信越自動車道(上田菅平インターチェンジ)を有しています。上田市は、安心安全な飲料水を提供するために古くなった水道管の更新や、施設の耐震化、漏水防止対策の実施、水質検査計画を毎年策定し、より質の高い水道水の確保に努めています。

参考・引用文献、画像出典:上田市ホームページ(http://www.city.ueda.nagano.jp/hp/index.html

長野県上田市

本稿についての照会先:
藤田エンジニアリング(株)
上田営業所
係長 小松 和則 様
長野県上田市芳田1277-2
TEL:0268-34-7810/FAX:0268-35-3777

本社 技術本部
技術部 計装技術課
課長 村上 仁 様
群馬県高崎市飯塚町1174-5
TEL:027-361-1111/FAX:027-363-7748


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