エムエスツデー 2012年1月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 あけましておめでとうございます。

 2012年は、エム・システム技研にとっても私にとっても記念すべき年になります。と申しますのも、私が37歳の時に創業したエム・システム技研は、今年4月1日に40周年を迎えます。 
 この40年間、日本の高度経済成長期もありましたが、20年前にはバブル経済が崩壊し、3年前にはアメリカ発のリーマンショックに襲われました。そして今、ギリシャショックに引き続いてイタリアショックが起こっています。
 このような経済的大渦の中、エム・システム技研が一度の赤字決算も経験することなく、順調に成長して来られたのは本当にありがたいことだと思っています。

今宮戎神社の祭礼「十日戎」= 大阪市浪速区

 最近になって、日本のお家芸だと思われていたデジタルテレビの市場が中国、韓国の追い上げを受けて、主力メーカーであるパナソニックやシャープが生産を大幅に縮小するというニュースが流れ、何か、来るべきものが来たなと思ったのは、私だけではなかったのではないでしょうか。
 NHKのニュースが、テレビ受信機能を高密度に詰め込んだLSI(大規模集積回路)を電源回路に組み込んだと思われる本体基板を、東大阪のベンチャー企業が設計し、中国製の高機能液晶パネルと組み合わせることによって、超低価格のデジタルテレビを完成させ、中国のEMS(委託生産を引き受けるメーカー)企業を利用して製造販売していると報じていました。
 半導体技術の進歩は、毎年一定の比率で高密度化し、専門技術をその中に収納した超LSIが商品化され、そしてそれらが次々とその規模を拡大してゆくという「ムーアの法則」が、今も生き続けていることを思い知らされました。

 創業の頃、私は、水道局で広く使われている電話回線利用のテレメータを、いずれ自社の商品に加えたいと思っていましたが、当時のエム・システム技研には情報を電話回線に乗せる音声モデムの技術がなく、実現できませんでした。
 その後数年して、なんと、通信機メーカーがモデム機能を詰め込んだモデムチップを売り出しました。早速購入することで、電話回線テレメータの商品化が実現しました。創業製品の避雷器「エム・レスタ」が、電子化された工業計器の雷被害を劇的に防ぐことにすでに成功していたため、日本中の水道局には「避雷器のエム・システム技研」として知られていました。そのこともあったのでしょう、テレメータ事業は思ったより早く立ち上がり、企業の成長に貢献しました。
 高度経済成長の終焉とともにテレメータの市場は縮小し、モデムチップの生産も中止され、ほとんどの通信機大手メーカーはテレメータ事業から撤退することになりました。
 エム・システム技研は、入手不能になったモデム機能をDSPチップ(デジタルシグナルプロセッサと呼ばれるLSI)を用いて実現し、新しい回路によるテレメータを開発して、テレメータ事業を継続しています。今や全国的に更新需要が活発であり、当社は順調に受注を伸ばしています。まさに継続の力が結果に結びついているものと喜んでいるところです。

 もう一つ、工業計器の世界も、この40年の間に驚くほど変わりました。よく観察してみますと、1980年頃まではPA(プロセスオートメーション)の時代ではなかったかと思います。それ以後今日までは、FA(ファクトリーオートメーション)の時代になりました。そして今、CA(シティオートメーション?)が市場に加わってきたものと分析できます。

 工業計器の市場は、高度成長時代の「巨大プラントの自動化」を実現する度に拡大発展してきました。過去に例のない巨大プラントの計装システムを取りまとめるエンジニアリングの仕事は、工業計器メーカーが引き受けることになりました。それは自社の工業計器の採用を求めるメーカーにとって、エンジニアリングを引き受けることが即、自社の工業計器を受注することになったからです。計装予算が、当時のお金で数億円に上ることは珍しいことではありませんでした。その頃までは、オートメーションといえばこのPAのことを指していたように思います。

 バブル経済の崩壊とともに大形のプラント建設は下火となり、川下産業といわれていた乗用車や家電などの加工組立産業がクローズアップされ、制御機器の中心を担ったのがPLC(プログラマブルロジックコントローラ)と呼ばれるものでした。そしてそれが加工組立をする機械の自動化の主役となりました。 
  このPLCを中心に据えたオートメーションのことを総称してFAと呼んでいます。FAにおけるエンジニアリング作業を担ったのは、自動化機械を生産しているメーカーのエンジニアリングを担当するメンバーか、機械メーカーの関連会社のエンジニアということになり、プラント建設に比べて、対象となる物件の数が膨大な数に上るため、PLCメーカーは積極的に自社PLCの市場を獲得するため、システム設計者を対象にしたスクール活動に力を入れていました。

 このPLCに対して、制御対象となる機械や装置のセンサ群が発信する信号を取り込むために必要となる工業計器が、「リモートI/O(アイオー)」と呼ばれるもので、各種のアナログ信号やON−OFF信号を取り込み、PLCがもつオープンネットワークの通信機能を通して、PLCに計測信号を伝え、あらかじめ設定されたプログラム(ラダープログラムと呼ばれています)に従って、同じリモートI/Oを通じて制御対象となる機械に制御信号を伝えます。

 次にクローズアップされてきたのが、物を作らない設備の自動化で、CA(シティオートメーション?)と呼んでもよい市場があります。
 たとえば電力計測を通じて省電力を実現するための計測管理システムや、ビルの空調設備を計測制御するシステムです。この市場は快適な生活空間を獲得するためのオートメーションなので、SA(サービスオートメーション)と呼んでもよいのかも知れません。
 この世界は多岐にわたるため、これから高度成長するマーケットになるのではないかと注目しています。

 エム・システム技研は、これらPA、FA、CAのいずれのオートメーションシステムにも共通に使用される工業計器の単体メーカーとして成長してきました。あくまでも工業計器は生産財であり、制御対象になる機械設備は30年、50年と働き続けます。しかし工業計器は精密な電子部品を内蔵する電子機器であるため、15〜20年経過すると性能の劣化がやってきます。その時が来ても、エム・システム技研は製品の廃形を実施せず納入当時と全く同じ仕様性能の製品を製造し出荷することによりメーカー責任を果たしています。

 日本のGDPは、中国に抜かれたとはいっても約500兆円あり、それだけの生産を維持する産業設備が稼動を続けています。したがって日本中の生産現場では、工業計器各社が過去に納入した計装設備が、当然、現在この瞬間も稼働中であり、かつそれらの工業計器がリプレース時期を順次迎えているわけです。

 エム・システム技研は受信計器と呼ばれる計測信号の変換、伝送、表示、記録、そして制御に係わる全ての機器を取り揃え、いつでも短納期で出荷できる体制を確立しています。それも廃形機種を出さないことで、日本の製造業の継続的な維持発展に今後とも貢献してゆけると確信しています。ご期待ください。

えびす飾り

(2011年12月)


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