エムエスツデー 2008年11月号

電子機器の性能評価を主目的とする試験・研究施設「京都テクノセンター」を開設

株)エム・システム技研 品質保証部

はじめに

 エム・システム技研は、このたび京都府木津川市に、エム・システム技研製品の信頼性向上および短期間での製品開発を目指し、主に評価試験の充実を目的とした「京都テクノセンター」を開設しました(図1)。

 製品の信頼性評価のより一層の体制強化を図るため、エム・システム技研として初めて導入する電波暗室やシールドルームといった設備を設置しています。

図1 京都テクノセンターの外観

1.概 要

 京都テクノセンターを開設したエリアは、関西文化学術研究都市木津南地区の文化学術研究ゾーン(京都府木津川市)にあります。

 当センターの敷地面積は2,850m2、2階建てで延べ床面積が約1,017m2、常勤者は当面12名ほどですが、5年後には80人体制を予定しています。

2.EMC 注1)対策の必要性

 昨今、電子機器は技術の発展に伴い、より一層の多機能化、高性能化が進んでいます。また、携帯電話、無線LANなどの無線通信技術の普及といった電磁環境の複雑化も挙げられます。このような技術の進歩により、電子機器全般において、電子回路の高密度化や信号の高周波化、回路全体の低電圧化が進み、微弱なノイズ電磁波にも影響を受けやすい傾向にあります。

 電磁波対策には、EMI注2)対策とEMS注3)対策を合わせたEMC対策が基本になります。このEMC対策は、製品の設計・開発段階から講じる必要があります。

 また、安全性の面からもノイズ電磁波の許容規制は年々厳しくなっており、EMC対策が重要視されてきました。

 中でも、EU域内で強制されているCEマーキングへの適合性を確認するため、多くの機器メーカーは公的検査機関に試験を委託しています。

 エム・システム技研では、新製品を逸速く開発するために、電波暗室、シールドルームを設置しました。

3.CEマーキング

 CEマーキングとは、欧州連合(EU)域内で販売される指定製品(玩具から医療機器まで幅広い製品)に表示を義務づけられているマークで、製造業者が該当指令の基本的要求事項を満たしていることを確認・宣言したという位置づけで、製品に表示するマークのことです。CEマーキングへの適合性を確認する指令としてEMC指令があり、要求される各種の試験をまとめましたので、表1をご参照ください。

 エム・システム技研の製品機種は3,000を超え、その内CEマーキング対応製品は、600を超えています。これらの製品のCEマーキングへの適合性を適切に管理するためには、自社設備として電波暗室やシールドルームを所有する必要性を感じ、建設することとなりました。

表1 EMC指令で要求される試験

参照規格 基本規格 名  称 エム・システム技研
での試験場所
EN61000-6-2 IEC61000-4-2 静電気放電イミュニティ試験 シールドルーム
IEC61000-4-3 放射、無線周波数、電磁界イミュニティ試験 電波暗室
IEC61000-4-4 電気的ファーストトランジェント/
バーストイミュニティ試験
シールドルーム
IEC61000-4-5 サージイミュニティ試験 シールドルーム
IEC61000-4-6 無線周波数界で誘導された
伝導妨害に対するイミュニティ
シールドルーム
IEC61000-4-11 電圧ディップ、停電
及び電圧変動イミュニティ試験
環境試験室
EN61000-6-4 CISPR16-2-3 エンクロージャポート−開放区域試験場所
又は半無響法
電波暗室
CISPR16-2-1 低電圧交流電源ポート シールドルーム
CISPR16-1-2
CISPR22 電気通信/回路網ポート シールドルーム

 

4.電波暗室

図2 電波暗室 電波暗室は、シールドルームの内壁を電磁波吸収体(電磁波を吸収する構造体)により覆うことで、室内での電磁波の反射を防ぐようにしている設備です(図2)。

 電波暗室の内側では、基本的に壁面や天井で電磁波が反射されないので、擬似的に周囲に他の物体がない環境(オープンサイトと同様の環境)が再現されます。これにより、試験製品から発射される電磁波を正確に測定することが可能になります。

 つまり、電波暗室とは、外部からの電磁波の影響を受けず、かつ外部へ影響を与えないように電磁気的に隔離された閉鎖空間であり、加えて内壁で電磁波が反射しないような構造になっています。

 なお、京都テクノセンターに設置した電波暗室は、EMIとしては、「3m法」注4)での測定ができ、1GHzまで対応可能となります。また、EMSとしては、3GHzまでの電波を製品に放射することが可能です。

5.シールドルーム

図3 シールドルーム 電磁波関連の測定、性能評価を実施する場合には、他の無線通信に混信を与えず、逆にそうした無線通信からの影響を受けないように、試験場所を隔離することが臨まれます。

 このため、金属などの導電性の材料で電磁波を遮蔽し、その内部で実験を行うような試験設備をシールドルームといいます(図3)。

 シールドルームでは、外部からの電磁波の影響を遮蔽することにより、製品に対する外部電磁波の影響について、正確な測定が可能です。

6.その他の設備

図4 計測室 エム・システム技研が開発した多種多様な製品の性能評価を行うため、京都テクノセンターには必要とする各種計測器、試験機器類を完備しており(図4)、温度や湿度、振動といった使用環境の変化による耐性評価を目的とした環境試験室(恒温槽類を設置)も準備しています。

おわりに

 以上述べたように、京都テクノセンターでは各種試験設備を取り揃えており、今回、初めての導入となる電波暗室、シールドルームなどはエム・システム技研製品の信頼性向上に直接貢献するものと確信しています。

 京都テクノセンターを核として、お客様へより信頼性の高い製品の提供に努めて参りますので、よろしくお願いします。

注1)EMC(Electro Magnetic Compatibility):電磁環境両立性
注2)EMI(Electro Magnetic Interference):電磁障害。Emission。他の機器に電磁的な影響を与えること。
注3)EMS(Electro Magnetic Susceptibility):電磁感受性。Immunity。他の機器から電磁的に影響を受けること。
注4)3m法:製品とアンテナまでの距離を3mで測定する方法。


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