エムエスツデー 2008年10月号

お客様訪問記

北海道上富良野町に
Webロガー機能拡張用として納入されたSCADALINXpro

(株)エム・システム技研 システム技術部

 北海道空知郡上富良野町は、北海道の中央部、富良野盆地の北部に位置し、東は国立公園大雪山系の十勝岳、西は夕張山地の山岳に連なり、南は富良野盆地の平坦部に開け、北は上川と空知郡界の分水嶺になっています。北海道におけるラベンダー発祥の地としても知られています。自衛隊で働く方々を含め、人口12,400人余りの町ですが、夏は日の出公園オートキャンプ場を訪れる道内外の人々で賑わいます。

 北海道上富良野町役場に納入されたテレメータ D3シリーズについては、『エムエスツデー』誌2006年7月号の本欄ですでにご紹介済みですが、このたびそのシステムが機能拡張再構築されましたので、上富良野町役場 建設水道課 上下水道班主査 中島 聡哉 様、本システムの設計、構築を担当された札幌テーケーシー(株)係長 松原 弘昌 様、城(しろ) 康隆 様をお訪ねし、お話を伺いました。

図1 システム構成図
図1 システム構成図[拡大図

[エム・システム技研、以下エムと略称]本システムを更新再構築された経緯についてお聞かせください。

[中島]今回、草分ポンプ場の電気計装盤の更新に伴い、既設のデータロガーシステムおよびメール通報装置にデータを取り込むことになりました。草分ポンプ場からは配水池に向けてポンプで水を送っています。配水池のデータは、自営線経由で、草分ポンプ場の計装盤に表示しています。配水池は平地に囲まれた小高い丘の上にあり、そこから自然流下で各家庭に送水しています。ところで、配水池がある丘は、高い丘ではないのですが、突出しているために、頻繁に落雷にみまわれています。落雷により、水位計が壊れたり、ヒューズが切れたりするたびに、修理やヒューズ交換を強いられていたため、その対策も必要でした。

[エム]システムの構成や概要についてお教えください。

[松原]全体構成と今回増設およびリプレースした部分については、図1をご参照ください。

 草分ポンプ場から入力する点数はAi/Ao 5点、Di/Do 31点です。草分ポンプ場から役場へは、フレッツ・グループアクセスを利用して、リモートI/O R3シリーズネットワーク変換器(形式:72EM-M4を設置し、清富浄水場と同じ構成で伝送しています。また次亜塩素注入率制御を行っているため、監視装置からは注入率の書き込みが行えるようにしています。既設のデータロガーシステムではSCADAソフトウェア(Citect)を使用していたため、データ取込みについては、Citectでのタグ増設や画面追加などで対応できましたが、メール通報装置Webロガー(形式:TL2W)の入力点数が容量をオーバーしてしまいました。さらに、たとえ点数容量が足りたとしても、設定値変更などのために必要なTL2Wユーザー固有画面増設で使用する内部メモリの余裕もありませんでした。

図2 SCADALINXpro サーバPC[城]Webロガーをもう1台増設すると、固定IPアドレスのADSL回線契約が増え、さらにランニングコストもかかるため、回線は1回線のままで使う必要がありました。幸い、Webロガーが設置されている役場の盤内は、パソコンを設置できる環境であったため、WebロガーをこのFAパソコンで置き換え、それにWebサーバ機能およびメール通報機能を有するエム・システム技研の新しいSCADAソフトウェア(SCADALINXpro)をインストールすることにしました。なお、FAパソコンでは通常は操作は行わないため、モニタ、キーボード、マウスなどは接続していません(図2)。

 リモート入出力装置としては、従来リモートI/O R1Mシリーズを使用していましたが、設置スペースが足りなくなるため、R3シリーズに置き換えました。

[中島]もう一つの問題である配水池への落雷対策ですが、配水池と草分ポンプ場間の自営線を光ファイバにすることで解決しました。そのときに役に立ったのが、D3シリーズの光ファイバ用通信カード(形式:D3-LP1です。

[エム]更新再構築後、以前と比べて改善された点をお聞かせください。

[中島]草分ポンプ場のデータ監視ができるようになったことは当然ですが、SCADALINXproはWebサーバ機能を備えているため、運用責任者が自宅のパソコンからインターネットを介して、監視画面を参照できるようにもなりました。

図3 携帯電話アクセス画面 ただし、外にいることが多いこともあり、従来から通常は携帯電話によって現在値表示画面を参照するようにしていました。Webロガーでは、現在値表示の順番をチャネル番号とは無関係に自由に割り付けられなかったのですが、SCADALINXproを使うことにより、表示画面の設計が自由に行えるようになりました。そのため、携帯電話から参照する画面で、参照したいデータを画面の最初の方に表示することによって、携帯電話でスクロールなど余分な操作をしなくてもよくなり、以前より操作性が向上しました(図3)。たとえば、漏水の状況、対策後の効果の確認などがスムーズに行えるようになりました。役場内では、通常はCitectロガーシステム画面で監視していますが、SCADALINXproクライアント表示画面はCitectロガーシステムのバックアップシステムにもなっています(図4)。

図4 SCADALINXpro 警報トレンド監視画面 なお、配水池への落雷は相変わらず発生していますが、それによる被害は、皆無となりました。いろいろな意味で、システム機能の向上が実現し、大変良かったと思っています。

[エム]今後の課題をお聞かせください。

[中島]まだ1箇所、塩素注入を行っている浄水場があるため、そこからのデータ取込も必要になってくるでしょう。Eメールアドレスは、現在は、役場が所有している携帯電話のEメールアドレスしか登録していませんが、将来は複数登録することも考えられます。その際には、ユーザーが簡単にEメールアドレスを変更・追加できるための画面が必要になります。

[エム]本日は、お忙しいところをありがとうございました。

本稿のシステムについての照会先:  
札幌テーケーシー株式会社
係長 松原弘昌様
〒003-0012 北海道札幌市白石区
中央2条1丁目 浅沼ビル4F
TEL.011-813-3336
FAX.011-813-3343

上富良野町のご案内:  
上富良野町役場公式ホームページ
http://hp.town.kamifurano.hokkaido.jp/

てれまるは、(株)エム・システム技研の登録商標であり、SCADALINXproは、同じく出願中の商標です。


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