エムエスツデー 2006年9月号

計装豆知識

落雷と誘導雷印刷用PDFはこちら

1.落 雷

夏の太陽で暖められた地上の水蒸気を含む上昇気流は、上空の冷たい空気で冷却され細かい氷の結晶になります。この結晶は気流の中でぶつかり合い正負電荷に分離しながら雷雲になります。

雷雲はいくつものセルから形成され、同時に雲底と逆極性の正電荷(拘束電荷)が架空線路や大地に誘起されます。この状態で電界強度が限界に達すると、雲内(雲間)の正・負電荷間(セル間)で放電が生じます。これが雲内(雲間)放電です。

一方、落雷を時間経過で見ると、雲底から大地へ向けて先駆放電(ステップトリーダ)が繰り返し放たれ、大気の絶縁が破壊されます。その先駆が大地に近づくと大地側から上向きの放電(リーダ)が発せられ、両放電によって絶縁破壊された大気に大量の電荷が注入され「落雷(主放電:帰還雷撃)」注)となります。

落雷に比べて、雲内(雲間)放電の頻度は高く、放電が繰り返されることによって雷雲の電荷は消滅します。放電電流については、国内では最大240kA(ヨーロッパでは515kA)の実測例があるそうですが、多くは1k~20kAの間といわれています。放電電圧は数億Vともいわれますが、数百万V以上であることは確かなようです。

2.誘 導 雷

誘導雷とは、雷雲の発生から雲間、雲内、主放電を起因として二次的に発生する現象であり、その影響は広範囲にわたり拡散します。 放電による「電磁誘導」、強烈な照度による「電磁波」、架空線路上を進行する正電荷(進行サージ:雲底の負電荷消滅で拘束から解かれた正電荷が減衰しながら線路上に沿って両側に進行する)の合成が「誘導雷サージ」です。

直撃雷(落雷)の頻度に比べて発生回数は著しく多く、雷雲が遠ざかるか消滅するまで何度でも電線や通信回線およびアンテナを通して屋外や屋内の設備に侵入します。雷被害の多くは、この誘導雷が原因で発生します(図1参照)。

図1

(1)誘導雷サージの侵入

• 線と接地間(放電破壊)

1対(2本)のケーブルに侵入した誘導雷サージ電圧(V1とV2)は、大地に対して非常に高い電位を生じ、接地されている箇所(金属ケースやコモンライン)との間でアーク放電を生じます(図2参照)。

そのときの放電電流が回路の一部を流れるため、電流の通路になった部品を破壊します。サージの大きさにもよりますが、線・接地間電圧は千~数万V程度になり、部品が黒コゲになるので外見からもわかります。

• 線間(線間破壊)

1対(2本)のケーブルに侵入した誘導雷サージ電圧(V1とV2)は、大地に対して等しい(V1=V2)のが普通ですが、線路上を進行する過程と避雷器のサージ抑制素子の特性(放電遅れ、放電開始電圧の差)により差(V=V1−V2)を生じます(図2参照)。

この差電圧(V)は一般にそれほど大きい値ではないのですが、異常電圧として線間に加わり線間耐電圧の低い機器を破壊します。 サージの大きさにもよりますが、線間で数V~数十V位の電位差を生じ、部品の損傷は外見からはわかりません。

図2

(2)誘導雷対策

誘導雷サージの侵入を100%防ぐことは不可能なので、あらかじめ保護対策を講じておかなければなりません。線路へ侵入した雷サージは、電源線や信号線を通して機器やシステムの端子部へ瞬間的に高電圧インパルスとなって現れます。

保護したい機器やシステムの端子部に隣接して、用途に適した避雷器を正しく設置すれば、一般に大きい保護効果が得られます(図2参照)。                    

注)今日、全世界で1年間に約1600万回の雷雨が発生し、1秒間 に約100回の雷放電が生じているようです。

【(株)エム・システム技研 ホットラインG】

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